三か月、待った。
向こうから誘われるのを。連絡が来るのを。何かしらの動きがあるのを。
その間、彼が何をしてたかというと。私の投稿に、ぜんぶ、いいねを押してた。それだけ。
いや、押す指があるなら、送れよ
何度そう思ったか。でも、いま振り返ると、あれが彼にとっての精一杯だったのかもしれない。押すのに毎回、一秒くらい迷ってたのかも。
蟹座の男の人の奥手さって、こっちの想像を軽く超えてくる。しかもタチが悪いのが、その奥手が、脈なしとまったく同じ顔をしてること。
奥手というより、傷を先に想像してしまう
断られる場面を、勝手に予告編で見てる
蟹座、想像力がずば抜けてるの。それが恋になると、悪い方向にフル回転する。
誘ったら、迷惑がられるかもしれない。既読スルーされるかもしれない。気まずくなって、いまの距離すら失うかもしれない。
まだ何も起きてないのに、断られたあとの自分の惨めさまで、鮮明に見えちゃう。で、その予告編がしんどすぎて、行動する前に力尽きる。
奥手なんじゃなくて、想像の中で先に一回、フラれてるの。
いまの関係を壊すのが、いちばんこわい
もうひとつ、蟹座らしい理由があってね。
彼らは、いま手元にあるものを守りたい人たち。冒険して大きく取りにいくより、持ってるものを失わないほうを選ぶ。
だから、そこそこ仲がいい状態って、彼にとってはけっこう満足なの。危険を冒す理由がない。告白して玉砕したら、いまのやりとりすら消える。それなら、この距離のままでいい。
そうやって、何か月も、へたしたら何年も、同じ場所にいる。ずっと同じ距離にいるのは、諦めてるからじゃなくて、失いたくないから。
砂に埋まって、じっとしてる
浜辺の蟹って、危険を感じると砂に潜るでしょ。目だけ出して、様子をうかがってる。
奥手な蟹座、まさにあれ。
出てこない。動かない。でも、ちゃんと見てる。あなたが誰と話してるか、今日は元気そうか、全部把握してる。把握してるのに、砂から出てこない。
出てこないのは、興味がないからじゃないの。安全が確認できてないから。
奥手な彼が、水面下でやっていること
いいねと既読は、彼なりの精一杯
分かりにくいんだけど、彼、動いてないようで動いてる。
投稿に反応する。既読をつける。共通の友達に、それとなくあなたの話題を振る。飲み会で、近くの席を確保する。
どれも直球じゃない。全部かすってる。でも、彼の中では相当な勇気を使ってるの。
(そんなん動いたうちに入らんでしょ)って言いたくなるけど、彼の基準では、これでも前進なのよ。
あなたの情報を、やたら集めてる
奥手な蟹座、行動しないぶん、情報収集がすごい。
好きな食べ物、休日の過ごし方、苦手なタイプ。いつのまにか把握してる。しかも、直接聞かない。まわりから、じわじわ集めてる。
準備してるの。誘うときに失敗しないように。彼の中では、シミュレーションが何十回も回ってる。
で、シミュレーションだけで満足しちゃうことがある。そこが、まぁ、この星座の困ったところなんだけど。
タイミングを待ちすぎて、逃す
彼、完璧な瞬間を探してるの。
相手の機嫌がよくて、二人きりで、話の流れが自然で、断られなさそうな空気。この条件が揃うのを待ってる。
そんなタイミング、来ないよ。永遠に。
待ってるうちに季節が変わって、いつのまにか他の人に取られてた。蟹座の恋愛あるある、だいたいこれ。切ないんだけど、ほんとに多い。
奥手なだけか、脈がないだけか
動かないけど、目線が忙しいなら脈あり
ここ、いちばん知りたいところでしょ。見分け方を置いておくね。
奥手な蟹座は、動かないのに落ち着きがないの。目が合いそうになるとそらす。話しかけると、ちょっとそわそわする。あなたが誰かと話してると、視界の端で気にしてる。
記憶力も手がかり。あなたが前に言ったことを、彼が覚えてる。これは、興味を向けられてる証拠。
それから、あなた発の話題には必ず乗ってくる。自分からは始めないのに、こっちが振ると返ってくる。返信は遅くても、途切れない。
動かないうえに、静かなら
残念な側の話もしておく。
避け方に動揺がない。あなたの話を覚えてない。こっちから振っても、会話が広がらない。二人きりになっても、なんの緊張感もない。
このパターンは、奥手じゃなくて、たぶん、そこまでの関心がない。
判定の軸は、彼の落ち着きぐあい。あわてる奥手か、平然とした無関心か。ここだけ見れば、わりと分かる。
五か月待って、私が知ったこと
待ってるあいだ、彼も待っていた
昔、蟹座の人と、まさにこの状態になったことがある。
仲はいい。連絡もとる。でも、進まない。会えば楽しいのに、次の約束は出てこない。
私、待ってたの。彼から言ってくるのが筋でしょ、って思ってた。女から動くのはちょっと、っていう、いま思えばどうでもいいプライドもあった。
五か月。ほんとに、なんにも起きなかった。
しびれを切らして、私から誘ったの。ごはん行こうよ、って。震える指で送った。既読がつくまでの三分、心臓がばくばくして、(うわ、やっちゃった)って何回も思った。
返信、二十秒で来た。行きたいです、って。
は?
あとで聞いた、彼のとんでもない告白
付き合ってから、聞いてみたの。なんで誘ってくれなかったの、って。
彼、言ったよ。誘う文面を、下書きに保存してた、って。
消しては書いて、消しては書いて。何回もやって、結局送れずに寝る。それを何か月も繰り返してたらしい。
(それ、五か月分の下書きってこと?)
腹が立つより先に、笑っちゃった。そのあと、ちょっと泣きそうになった。あの人、なんにもしてないように見えて、毎晩ひとりで戦ってたんだ。
待ってたのは、私だけじゃなかった。彼も、待ってた。ふたりで向かい合って、じっと待ってた。あの時間、なんだったんだろうね。もったいなさすぎるでしょ。
待つべきか、動くべきか
待っても、たぶん来ない
はっきり書くね。蟹座の奥手は、放っておいて解決するタイプじゃない。
時間が経てば勇気が湧く、みたいなことは起きないの。むしろ逆で、時間が経つほど、彼の中で告白のハードルが上がっていく。関係が長くなるほど、失うものが増えるから。
一年待った人が、二年目に動くことは、まぁ、あんまりない。
こっちから動くとき、直球はいらない
じゃあ告白しろって話かというと、そうじゃないの。
蟹座に必要なのは、安全の証明。断られない保証さえあれば、彼は動ける。
だから、動かすのは大きい球じゃなくて、小さい球。ごはん行こうよ、でいい。あれ食べたいって言ってたよね、行かない?でいい。恋愛の色を薄めた、軽い誘い。
これが効くのは、彼にとってリスクが低いから。断る理由がないし、断られる怖さもない。
一歩だけ開けて、あとは彼に渡す
理想は、扉を全部開けないこと。
最初の一回だけ、こっちが誘う。そこで彼が安心したら、次からは彼が動きはじめる。ほんとに、びっくりするくらい変わるよ。
砂から出た蟹は、そのあと、けっこう堂々と歩くの。あの慎重さはどこいった、ってくらい。
だから全部リードしなくていい。最初の一歩ぶんだけ、道をつくってあげる。そこから先は、彼の足で来てもらう。
やってはいけないのは、試すこと
これだけは避けて。他の男の影をちらつかせたり、駆け引きで焦らせたり。
奥手な蟹座に嫉妬をぶつけると、燃えないの。しゅんと引っ込む。自分より、あっちのほうがいいんだろうな、って勝手に結論を出して、静かに身を引く。
彼を動かすのは、危機感じゃなくて安心だけ。ここを間違えると、五か月が一年になる。
下書きフォルダの中で、彼は何回も告白してる
奥手な蟹座は、なんにもしてないように見える。実際、外から見える動きはほとんどない。
でも彼の中では、たぶん、けっこうな回数あなたに向かって歩き出してる。そのたびに、途中で引き返してる。
消された下書きは、あなたには届かない。届かないまま、朝が来る。
その繰り返しを止められるのは、たいてい、こっちの何気ない一言のほうだったりする。
