先輩にごはん誘われちゃってさ、と、わざとらしく報告してみた夜がある。
彼はスマホから顔も上げずに、へえ、とだけ言った。それだけ。
もっと焦ってよって、正直イラっとした。私の作戦、不発。
で、二週間後。連絡が、ぴたりと止まった。
怒られたわけじゃない。責められたわけでもない。ただ、静かにいなくなった。あのときの私はまだ知らなかったんだよね。蟹座の男の人にマッチを擦っても、燃えない。湿るだけ。
蟹座の嫉妬は爆発しない。底のほうに、溜まっていく
あの二週間、彼は一度も怒らなかった
戻ってきた彼は、何事もなかった顔をしてた。ふつうに笑うし、ふつうにごはんにも行く。ホッとした。ホッとしたんだけど、なんか、一枚布がかかったみたいな距離があってさ。
週末なにしてたの、って彼が聞かなくなったの。それまで毎回聞いてきてたのに。
決定的だったのは半年後。ぽろっと、あの先輩の話、覚えてるよ、と言われた。ゾクッとした。半年だよ?こっちはとっくに忘れてたのに、あの人の中にはきっちり保存されてた。
怒りの代わりに、記録していく人たち
蟹座男子は、感情を出さない代わりに、心の底にタンクみたいなものを持ってる。そこへ、ぽつん、ぽつん、と落としていくの。表面はにこにこ。中では水かさがじわじわ増えてる。
これ、扱いとしてはかなり厄介。バーンと怒ってくれる人のほうが正直ラクなんだよ。謝れるし、仲直りできるから。蟹座は怒らない。ただ、覚えてる。
でもね、その記憶力って、裏返せばとんでもない愛情の証拠でもある。どうでもいい相手の一言を、半年も抱えてなんかいられないでしょ。刺さったってことは、それだけ深くまで入れてもらってたってこと。
嫉妬させたい、と思った夜のあなたが本当に欲しかったもの
その言葉、たぶん別の願いが化けた姿
検索窓に嫉妬のさせ方って打ち込むとき、彼が苦しむ顔が見たいわけじゃないはず。
欲しかったのは証拠でしょ。私はこの人にとって、ちゃんと重い存在なんだっていう、手触りのある証拠。
返事は来る、でも夜中。会う日はいつも彼の都合。こっちが合わせるのが当たり前になってて、文句を言うほどでもないんだけど、じわじわ削られていくやつ。あー、分かる。あれ地味にしんどい。
しんどさが限界を超えると、人はちょっと乱暴な手段を取りたくなる。嫉妬させたい、はその手前で鳴ってる警報みたいなもの。
雑にされてるんじゃなくて、安心されすぎてる
ここ、けっこう救いのある話でね。
蟹座の彼にとって、あなたはもう身内の枠に入ってる。彼らは身内に対して、驚くほど気を遣わない。緊張しないんだもん。だから外から見ると、雑に見える。
愛情が減ったんじゃない。緊張が抜けただけ。
これに気づいたとき、私、ちょっと泣きそうになった。(雑に扱われてたんじゃなくて、家族みたいに思われてたのか…)って。まぁ、それはそれで物足りないんだけどね(笑)。
彼、もう嫉妬してるかもよ。蟹座のわかりにくいサイン
急に世話を焼き始めたら、それは焦ってる
蟹座の嫉妬は、責める形じゃなく、抱え込む形で出てくる。
昨日までそっけなかったのに、突然、ちゃんと食べてる?とか、送っていこうか?とか言い出す。優しさに見えるけど、あれ半分は不安。取られたくないから、囲いを厚くしにきてるの。
LINEの返信がやたら早くなるのも同じ。焦った蟹は、攻撃しないで、巣の壁を高くする。
質問が、妙に細かくなる
誰と行ったの、何時に帰ったの、その人って前も話してた人?
問い詰める口調じゃない。世間話の顔をしてる。でも情報の粒が細かい。あれ、内心ではふつふつ煮えてるサイン。
逆にね、なんにも聞かなくなったら、そっちのほうが危ない。興味を失ったんじゃなくて、聞くのが怖いから聞かない。蟹座の沈黙には、二種類ある。
蟹座男性にちゃんと届く、揺さぶり方
緊張ゼロの関係が、たしかにゆるむのは事実。だから、ほんの少しだけ水面を動かす。爆破はしない。石を一個そっと落とすくらいで足りる。
彼のために予定を空けておくのを、やめてみる
効いたのは、これ。
今週いつ空いてる?に即答しない。ちょっと待って、確認する、って言う。で、実際に自分の予定を先に埋めちゃう。友達との旅行でも、講座の課題でも、美容院でも、なんでもいい。彼が誘おうとしたとき、あなたのカレンダーが先に埋まってる。
この事実だけで、蟹座はざわっとする。
あの人たち、所有欲がけっこう強い。強いのに口に出さない。だから内側でぐるぐる回るしかなくなる。私が誘いを断ったのは、一回きり。たった一回。なのに翌週の彼、別人かと思うくらいマメだった。
褒められてる気配は、報告しないで漏らす
誰々に褒められちゃった、と直接言うのは下手なやり方。蟹座、自慢話にはすっと引く。
そうじゃなくて、あなたが外の世界でちゃんと評価されてる空気が、勝手に漂ってる状態をつくるの。任される仕事が増えた。急に垢抜けた。まわりに人が集まってる。
言葉にしなくていい。あの人たちの観察力、ちょっと怖いくらい高いから。黙ってても全部見てる。蟹座に効くのは言葉じゃなくて、気配のほう。
甘えの供給を、ほんの少しだけ絞る
即レスが習慣になってるなら、たまに数時間置いてみる。ゼロにはしない。ここを間違える人、多いんだよなぁ。
いきなり音信不通にすると、蟹座は焦るより先に心を閉じる。傷つく前に引く、が彼らの初期設定だから。じわっと絞られたときだけ、あれ?って顔をする回数が増える。その、あれ?の積み重ねが、彼の意識をこっちに向ける。
これをやると、静かに終わる。蟹座に効かない嫉妬
他の男の、名前を出す
固有名詞は地雷。名前が出た瞬間、彼の中でその男が実体になっちゃうの。
蟹座って想像力が豊かなんだけど、その力、ネガティブ方向にもフル稼働する。実在するライバルを与えられると、闘志が湧くどころか、こう結論する。勝てないなら、傷つく前に離れよう。
失敗、もうひとつ白状するね。元カレの話を、軽い笑い話として彼にしたことがあって。彼、笑ってたの。笑ってたのに、その夜からLINEの温度が一度だけ下がった。ほんとに一度分。地味なのに、取り返しがつかないやつ。はぁ…。
SNSでの匂わせ
見てるよ。全部見てる。
フォローもしてない相手の投稿まで、なぜか把握してるのが蟹座。で、見た上で、何も言わない。
匂わせは届かないどころか、この人は不特定多数に向けて心を使うんだな、と判定材料にされる。いったん警戒モードに入った蟹の、あの解除の遅さ。想像したくないでしょ。
試すのが癖になった時点で、もう負けてる
いちばん怖いのは、嫉妬させるのが上手くなること。
仕掛ける。反応が返る。安心する。でもその安心、賞味期限がやたら短い。切れたらまた仕掛ける。ループ。
相手を試し続ける関係って、砂糖水を飲みながら砂漠を歩くようなもので、飲めば飲むほど喉が渇いていく。
私も一時期やってた。ダサい。書いてて恥ずかしい。(今なら分かる。あれは彼を試してたんじゃなくて、自分に価値があるか試してたんだ)
嫉妬させるより早い、彼を前のめりにさせるやり方
彼の日常に、あなたの気配を一個だけ置く
蟹座は縄張りの生き物。彼のルーティンの中にあなたの痕跡がひとつあるだけで、無意識にあなたを勘定に入れ始める。
マグカップでも、日曜の夜の電話でも、金曜だけ送る謎のスタンプでもいい。
そして、たまに、それを引っ込める。日曜の電話が一回だけ来ない。彼の一週間に、ぽっかり穴が開く。
どんな挑発より、この穴のほうが効く。蟹座を動かすのは圧じゃなくて、いつもの場所にあなたがいない朝。
たまに、ちゃんと弱音を吐く
これ、意外と知られてないんだけど、蟹座の男性は頼られると急にエンジンがかかるの。守る対象がはっきりした瞬間、あの慎重さがどこかへ消える。
仕事でへこんだ、とか、ひとりで決められない、とか。強がってばかりの女性の前だと、彼らは出番を見失う。出番がないと、蟹はじっと動かない。
嫉妬で焦らせるより、頼って動かすほうが、たぶん十倍早い。
会ってるときは、全力でごきげんでいる
会うと楽しい。会うと落ち着く。会うと、なぜか元気が出る。この積み重ねが、蟹座にとっての最大の投資先になる。
彼らは損得じゃなくて、居心地で人を選ぶ。居心地がよくて、しかもたまに手が届かない。そのバランスに、蟹座はめっぽう弱い。
例の二週間の沈黙のあと、私は挑発をやめた。代わりに、会うときはひたすらごきげんでいた。それだけ。
半年後、彼が白状したの。あのとき本当は焦ってた、って。え、いま言う?言ってよ、あの時に…!力が抜けて笑っちゃったけど、テンションは爆上がりしたんだ。
