ふすまの向こうで、彼が鼻をすすってた。
喧嘩の途中だった。私が一方的にまくし立てて、彼が部屋を出ていって、そのあと10分くらい静かで。様子を見に行こうとしたら、あの音。
うそでしょ、と思った。
声を荒げて出ていった人が、隣の部屋で泣いてる。あの落差に、私は完全に混乱した。怒ってたんじゃないの。今の何。
牡羊座の男性の涙って、こういう出方をするんだと知ったのは、あの日が最初だった。
牡羊座の涙は、悲しみより先に別の感情が動いている
泣く理由の中身が、他とけっこう違う。
怒りと涙が、同じ場所から出てくる
彼らの感情は速い。0から100まで一瞬で駆け上がる。
その勢いが行き場を失うと、怒りが涙に変換される。悲しくて泣いているというより、感情の量が処理しきれずに漏れている状態。
牡羊座の男性が泣くのは、心が折れたからじゃなく、感情が渋滞したから。
だから、泣いている彼を慰めようとすると、噛み合わない。彼は慰めてほしいわけじゃない。ただ、詰まったものが流れ出ているだけ。
悔しさが、いちばん多い引き金
勝てなかった、認められなかった、守れなかった。牡羊座の涙の後ろには、たいてい悔しさが立っている。
私の彼が泣いたあの日の理由も、後で聞いたら、私を言い負かせなかった自分に腹が立っていたからだった。えっ、そこ。
悲しみで泣く回数より、自分への怒りで泣く回数のほうが多いんじゃないかと思う。少なくともうちの彼はそうだった。
泣いた次の日、驚くほどけろっとしている
これ、最初は信じられなかった。
あんなに泣いていた人が、翌朝には普通に朝ごはんを食べている。しかも機嫌がいい。
彼らは感情を溜めない。出したら終わり。過去を引きずる装置を持っていないみたいな身軽さがある。こちらだけが昨日の空気を引きずっていると、置いていかれた気分になる。
本気になった牡羊座が見せる、分かりやすすぎる変化
隠すのが下手。というか、隠す発想がない。
行動が先に来る
好きだと言う前に、会いに来る。距離があっても来る。深夜でも来る。
言葉より足のほうが速い人たち。私は一度、遠方から3時間かけて突然来られたことがある。連絡もなしに。びっくりしすぎて笑ってしまった。
牡羊座の男性の本気は、移動距離に出る。会いたいと思った瞬間に体が動いているから、理屈がついてこない。
あなたのことで、他人に本気で怒る
これが分かりやすい合図。誰かがあなたを軽く扱ったとき、本人より先に怒る。
守る対象として認識した相手に対しては、驚くほど直情的になる。ときどき暴走して、こちらが止める側に回ることもある。あれは大変だった。でも嬉しかった。
予定を勝手に決めてくる
来週の土曜、空けといて。理由は言わない。
段取りが雑なので当日ぐだぐだになることも多いけど、あの強引さの中に、独占したい気持ちがある。回りくどい人じゃないから、直球で予定を押さえてくる。
逆に、興味を失うと連絡が一気に減る。分かりやすさが徹底している。
嘘が、下手すぎる
表情に全部出る。隠しごとをしているときは、目が泳ぐし、口数が変になる。
サプライズを仕込んでいるときも同じで、うちの彼は指輪を買った週、明らかに挙動不審だった。バレバレだったよ、と後で言ったら、悔しがっていた(笑)。
泣いている彼に、やってはいけないこと
泣いてるの、と確認する
これが最悪だった。ふすま越しに聞いたら、泣いてねえよ、と怒鳴られた。
牡羊座の男性は、泣いている自分を認めるのを嫌がる。指摘されると、恥ずかしさが怒りに変換されて、また燃える。
見なかったことにするのが、いちばん優しい。気づいていても、気づいていない顔をしておく。
その場で話し合おうとする
今ちゃんと話そう、と迫ると、彼はさらに混乱する。感情が渋滞しているときに、言語化を求められても無理。
時間を空ける。30分でいい。彼らの回復は本当に速いから、長く放置する必要はない。むしろ長すぎると、今度は放っておかれたと拗ねる。面倒くさい。可愛いけど。
後日、その話を持ち出す
あのとき泣いてたよね、と冗談ぽく言ったら、露骨に不機嫌になった。
彼らは過去を蒸し返されるのが本当に苦手。本人の中ではとっくに終わった出来事なので、掘り返す行為そのものが理解できないらしい。
私は一度これで、無駄な喧嘩を追加した。学んだ。
牡羊座の本気を、長持ちさせる関わり方
熱が高いぶん、冷めるのも速い。ここが不安の種になる。
追いかけさせる余地を残す
全部与えると、彼は退屈する。狩りが好きな人たちだから、手に入れた瞬間に興味の温度が下がる。
これは駆け引きの話じゃなくて、あなたが自分の生活を持っているかどうかの話。友人と出かける、趣味に没頭する、自分の予定を優先する日がある。
私が資格の勉強で忙しかった時期、彼の連絡量が明らかに増えた。あれは面白い現象だった。
反応を、はっきり返す
彼らは察するのが苦手。遠回しな不満は絶対に伝わらない。
嫌なことは嫌と言う。嬉しいことは大げさなくらい喜ぶ。この二つをやるだけで、関係がだいぶ楽になった。
喜ばれると、彼らはもっとやる。単純な燃料の入れ方だけど、これがいちばん効く。
変化を、こちらから持ち込む
同じ場所、同じ流れが続くと、彼は飽きる。悪気なく飽きる。
急に行き先を変える、行ったことのない店に連れ出す、突然の思いつきに乗る。ぱっと動く関係を保つと、彼の熱は持続しやすい。
うちは月に一度、行き先を決めずに車を出す日を作っている。目的地なしのドライブ。彼はこれが大好き。
熱が引いたように見えるとき
連絡の量ではなく、会う意志を見る
LINEが減っても、会おうとするなら大丈夫。牡羊座の男性は、興味がある相手には物理的に近づく。文字は苦手なだけ。
危ないのは、返信は来るのに会う予定が入らなくなったとき。彼らの気持ちは行動に直結しているから、動かないなら答えは出ている。
他人の目に映る自分を、意識させる
少し性格の悪い話をする。彼らは、あなたが他の誰かに評価されているのを見ると、急に熱が戻ることがある。
これを意図的にやると失敗するけど、あなたが実際に輝いていれば自然にそうなる。彼の中で、選んだ自分の目が正しかったと確認される。
私は仕事で表彰されたとき、彼が誰よりも騒いでいたのを覚えている。自分のことみたいに。あれは可愛かった。
ふすまの向こうで泣いていた彼は、翌朝、目玉焼きを2つ焼いていた。
昨日のこと何も言わないの、と聞いたら、もう終わったろ、と返ってきた。
終わってなかったのは私のほうだった。あの身軽さ、いまだに少し羨ましい。
