去年の梅雨どき、私は完全に手が止まっていた。今日ひま、だと軽すぎる気がして、お食事でもいかがですか、だと妙にかしこまる。指がぐるぐる迷ってるうちに深夜1時。というか、なんでこんなに緊張してるんだろう…自分でも呆れた。相手は獅子座の男性。職場でいちばん声が大きくて、いちばんよく笑う人だった。
結局その夜は送らなかった。送れたのは3日後で、しかも文面は最初に書いたやつとほとんど同じ。あの3日はなんだったのか。
獅子座男性を誘うとき、最初につまずくのはたいてい言い方
誘い文句をどれだけ丁寧にしても、彼の心が動かないことがある。逆に、雑に見える一言でパッと予定が決まることもある。この差、性格の相性というより、誘われた瞬間に彼が自分をどんな役どころに置いたかで決まっている気がしてならない。
遠回しな誘いほど、なぜか届かない
今度どこか行けたらいいね。
この言い方、優しくて安全で、そして高確率で流れる。獅子座の男性は察するのが苦手というわけじゃなくて、察してあげる場面だと気づいたら普通に動いてくれる。ただ、ふわっとした言葉は彼の中で予定として登録されないみたい。頭の中の予定表が、太いマジックで書かれてるタイプなんだと思う。細い鉛筆の文字は、たぶん見えてない。
心理学の通信講座で行動の意図と実行のズレを扱ったとき、日付と場所が入った瞬間に実行率が跳ね上がるという話が出てきて、あ、これ獅子座の彼のことだ、と勝手に納得した。
誘われ慣れて見えるのに、誘われるとやたら嬉しそう
彼、モテるし。誘っても迷惑かな。
これで踏みとどまる人、めちゃくちゃ多い。あるあるすぎて笑う。でも実際に誘ってみると、返事より先に表情が変わる。えっ、いいの、みたいな顔を一瞬する。あの一瞬を見た日の私、正直テンション爆上がりだった。
獅子座の男性は誘われるのが嫌いなんじゃない。脇役にされるのが嫌いなだけ。
賑やかで自信たっぷりに見える人ほど、自分から誘って断られる場面を数えている。誘われる側に回ったとき、ちょっとホッとした顔をするのはそのせい。
獅子座男性のデートの誘い方で効く言葉には、共通のかたち
私が試した中で反応が良かった誘い文句を並べてみたら、見事に全部おなじ形をしていた。お願い。それだけ。命令でも交渉でもなく、あなたに頼りたい、という向き。
教えてほしい、が刺さるのはプライドより責任感のほう
獅子座の男性を褒めて持ち上げれば動く、みたいな話をよく見かけるけど、あれ半分しか当たってない。持ち上げられただけだと、彼は照れて話題を変える。動くのは、頼られたとき。
焼肉の店、詳しいって言ってたよね。ひとつ選んでほしいんだけど、来週の土曜って空いてる。
これを送ったとき、返信は4分で来た。しかも店の候補が3つ、営業時間つきで。私は画面の前で、ちょっと笑ってしまった。頼まれた瞬間にスイッチが入るタイプの人、確実にいる。
面倒見のよさが持ち味だから、あなたのために動く場面を作ってあげると、彼の中でそのデートが自分の企画に変わる。自分の企画は、雑に扱えないでしょ。
日程を丸投げすると、誘いは静かに消える
いつでもいいよ、が優しさになる相手と、ならない相手がいる。彼はたぶん後ろのほう。あ、対比になった、言い直す。彼は、選択肢が多すぎると決めきれずに保留する人。
土曜の夜か、日曜の昼。どっちが動きやすい。
二択に絞ると、返事の速度がまるで違う。決断が早い人だから、決めるための材料さえ渡せば一瞬で決まるんだよね。渡さないまま待つと、彼の予定表の余白は他の用事で埋まっていく。
LINEの文面は、短いほど強い
長文で気持ちを整えて送ると、こちらは満足する。彼はスクロールする。それだけ。
行きたい店ができた、付き合ってくれる。
この短さで足りる。絵文字はひとつかふたつ、多すぎない程度。既読がついて返事が半日来なくても、追撃はしない。仕事中の彼はスマホを見てるようで見てない。責める言葉を一度でも送ると、彼の中で楽しい予定が気まずい予定に書き換わる。ここ、けっこう取り返しがつかない。
場所とタイミングで、返事の温度がはっきり変わる
誘い文句が同じでも、行き先の名前を変えただけで反応が変わった経験がある。あれは不思議だった。
彼が輝ける舞台を用意する
人が多くて、音があって、少し華やかな場所。獅子座の男性はそういう空気の中でいきいきする。話題の新しい店、ライブ、スポーツの試合、夜景の見えるところ、あとは彼が常連の店。常連の店、これ強い。店員さんと軽口を叩く彼を見られるし、彼はホームで気分がいい。私はその日、彼が店主とじゃれてるのを横で見ながら、この人ほんとにここが好きなんだな、とぼんやり思っていた。
落ち着いた個室で静かに向き合う時間も悪くない。ただ、それは2回目以降でいい。初回から静けさに放り込むと、彼はサービス精神を発揮する場所を探して、そわそわしはじめる。
誘う曜日と時間帯にも、当たり外れがある
平日の夜は疲れてる。金曜の夜は先約が入りやすい。狙い目は週末の昼から。明るいうちに会って、そのまま夜まで流れる誘い方が、彼にはいちばん自然に見えた。
それと、彼が何かをやり遂げた直後。表彰されたとか、大きい仕事が終わったとか。嬉しさを分けたい生き物だから、聞かせてほしいと言えば、ほぼ乗ってくる。
落ち込んでる日に誘うと、距離が一気に縮む
これは偶然見つけた。彼がミスして怒られた日、飲みに行こうと誘ったら、いつもより低い声でありがとうと言われた。ドキッとした。
派手に見える人ほど、へこんだところを見せる相手を選んでいる。そこに手を伸ばした人は、彼の中で特別な位置に移る。慰めなくていい、説教もいらない。おいしいもの食べに行こうよ、で足りる。
脈ありか確かめてから動きたい人へ
誘う前に確証がほしい気持ち、痛いほどわかる。私も何度も彼のトーク画面を上下にスクロールして、証拠を探しては見つからなくて、勝手に落ち込んでいた。
返信の速さより、話を広げてくるかどうか
既読が早い、遅い。そこばかり見ても、あんまり意味がない。見るべきは中身のほう。あなたの話に質問を返してくるか、自分の失敗談を混ぜてくるか。自分の話をしはじめたら、彼はもう心を開きにかかっている。人は好意のある相手に自分の情報を渡したくなる、という話を講座で聞いたとき、講師が例に出したのは職場の男性の雑談だった。あれ、ずっと覚えてる。
店を勝手に提案してくる、写真を送ってくる、予定を先に押さえようとする。そのあたりが揃ったら、あなたが誘わなくても彼から動く日が近い。
断られた日の引き際が、次の誘いを決める
断られると、こっちも恥ずかしい。私は一度、その恥ずかしさをこじらせて既読無視をしたことがある。最悪だった。あのときの自分、ちょっと張り倒したい。
了解、また声かけるね。
これで終わらせるのが、いちばん強い。あっさり引く人を、彼は覚えている。逆にすねたり、理由を問い詰めたりすると、彼の中で気まずさが積もる。断ったことを気に病ませない態度を貫くと、次に誘われたとき、彼のほうが借りを感じて乗ってくる。
誘ってから気づいた、獅子座男性の小さなクセ
実際に何度か会ってみないとわからない部分が、けっこうある。ここは体験談ばかり。
褒め方を間違えると、照れて逃げる
かっこいいね、と真正面から言った日、彼はうるさいなと笑って話題を変えた。イラっとした。せっかく勇気出したのに。
効いたのは別の言い方だった。この店選んだの、センスいいね。その気遣い、なかなかできないよ。彼がやったことを褒めると、素直に受け取る。しかも人が何人かいる場でぽろっと言うと、耳が赤くなるのがわかる。かわいい。
盛りすぎた褒め言葉は、たぶんバレてる。彼、人を見る目はちゃんとある。
会計もエスコートも、取り上げない
割り勘にしようと財布を出したら、いいからと制された。3回くらい押し問答して、私が折れた。あのときは申し訳なさで胸がざわざわしたけど、後から気づいた。あれを譲るのが、彼への信頼の見せ方だったんだと。
ごちそうさま、次は私に選ばせてね。
この一言で、貸し借りは綺麗に流れる。ドアを開けてくれる、車道側を歩く、コートを預かる。全部やらせてあげたほうが、彼は楽しそうにしている。守る役をもらった人は、その関係を大事に扱いはじめる。
二回目につなげる、帰り際の一言
デートの記憶って、途中の内容よりも終わり際の空気で色が決まる。ピークと終わりの印象が全体の評価を作る、というあれ。恋愛でもだいたい当てはまると思っている。
お礼の連絡は、その日のうちに短く
翌朝に丁寧な長文を送るより、別れて30分後に一行送るほうが効く。
今日ほんとに楽しかった。あの店、また行きたい。
具体的な固有名詞をひとつ入れると、彼の中で記憶が固定される。楽しかったですね、だけだと社交辞令の棚に入ってしまう。
次の主導権は、あえて彼に渡す
また誘ってもいい、と聞かない。次はどこ連れて行ってくれるの、と軽く投げる。彼は連れて行く側の役を渡されると、俄然やる気になる。私はこのやり方で、次の予定が勝手に決まっていく現象を何度か見た。
星座で人を決めつけるつもりはないし、当てはまらない人も普通にいる。それでも、誘い方をほんの少し変えただけで返事の温度が変わったあの感覚は、今も忘れられない。あの夜、送信ボタンを押す指が震えていたのが、なんだか遠い。
