乗り換えの駅のホームで、ふいに彼の手を握った。
次の瞬間、その手はするりとほどかれた。
彼がポケットから取り出したのは、小さなスプレー。
シュッ、シュッ。
アルコールのにおいが、ふわっと鼻先をかすめる。
(え、待って。私、除菌された…?)
スプレーをしまった彼が、こっちに手を伸ばしかける。
そのときにはもう、私はぷいっと顔をそむけていました。
次の電車に乗ってからの二十分、窓の外をにらみっぱなし。
彼が何か話しかけてきても、うん、とか、へえ、とか、生返事ばかり。
乙女座の彼と付き合いはじめて、まだ一か月目のことです(泣)
乙女座男性がスキンシップを拒否する5つの理由
乙女座の記号は、アルファベットのMそっくり。
よく見ると、最後の線がくるんと内側に巻きこんで、小さな輪を作っています。
同じくMに似た蠍座の記号は、最後が矢印になって外へ飛び出しているのに。
見ようによっては、大事なものを内側にしまっておく乙女座らしい形です。
触れてこない理由も、たいていはその輪の内側に隠れている。
人前では、恋人の顔より社会人の顔が勝つ
乙女座の男性は、場の空気や人の目にとても敏感です。
街なかで腕を組むのも、電車の中で肩にもたれるのも、彼の感覚では軽いマナー違反。
触れたくないわけじゃない。
公の場ではきちんとしていたい気持ちが、先に立つんです。
ヨガ仲間の友達の彼が、まさにこのタイプでした。
会社の最寄り駅のまわりでは、手をつなごうとすると、さっとポケットに手をしまう。
ところが電車で三駅離れたとたん、向こうから指をからめてきたんだとか。
(三駅って、なにその境界線…笑)
まぁ、三駅という数字の根拠は、本人にもよくわかっていないらしい。
同僚に見られるかもしれない範囲と、二人だけでいられる範囲。
彼の中では、そこにくっきり線が引かれていたわけです。
人前での拒否は、あなたへの拒否とは別物。
清潔感へのこだわりが、手より先に動く
乙女座は、清潔感へのこだわりが人一倍強い星座です。
自分の手が汗ばんでいないか。
さっき食べたランチのにおいが残っていないか。
触れる前に、そんなチェックが瞬時に走っている。
手汗が気になって、好きな人と手をつなげないまま一日が終わる。
そんな乙女座男子は、意外と多いんです。
冒頭のスプレー事件には、続きがあります。
電車を降りて、階段を上りきったところで、彼が申し訳なさそうに口を開きました。
さっき、前の電車のつり革とエスカレーターの手すりを触ったばっかりだったからさ。
そのままの手で、つなぎたくなかったんだよね。
それから今度は彼のほうから、私の手をそっと取ったんです。
まさか、あのシュッが、私のためだったなんて。
二十分ふてくされていた自分が恥ずかしくて、顔から火が出そうでした。
乙女座は、手をつなぐ前に、自分の手をきれいにしておきたい人。
拒否に見えたのは、ただの準備の時間だったんです。
予告なしの接触に、体がびくっと固まる
地の星座は、五感と深く結びついたグループだといわれます。
なかでも乙女座は、細かな感覚の変化に気づく力がずば抜けている。
肌ざわり、温度、においや音。
ふつうならやり過ごすくらいの刺激まで、きっちり拾ってしまうんです。
後ろから突然抱きつかれたときや、話の途中でいきなり腕に触れられたとき。
心より先に、体がびくっと反応してしまう。
たとえるなら、抜き打ちの避難訓練。
日時を知らされていれば、落ち着いて動ける。
予告なしにベルが鳴ると、大人でも一瞬、その場で固まってしまうもの。
あの、びくっ、は嫌悪ではなく、驚き。
拒否されたのはあなたではなく、予告のない瞬間のほうです。
正しいタイミングを探しているうちに、手が止まる
小学生のころ、大縄跳びにずっと入れない子がいました。
タイミングを測りすぎて、縄の横で体を揺らしたまま、次の一周を待ち続けてしまう。
ちなみに、それは私です。
スキンシップに踏みこめない乙女座の胸の内でも、あれとそっくりなことが起きています。
今つないだら、急すぎるかな。
映画の途中だと、集中を邪魔しちゃうかも。
もう少し人通りが減ってからのほうが……。
考えているうちに、気づけば帰りの駅に着いてしまう。
(で、結局そのまま手を振って解散。はぁ…)
完璧な瞬間を待つ乙女座にとって、触れることは、失敗できない一発勝負みたいなもの。
そのぶん、踏み切るきっかけをこっちで用意すると、あっさり縄に入ってこられたりする。
頭がいっぱいの日は、触れられることまで重たい
仕事の締め切り前や、考えごとが山積みの時期。
乙女座の頭の中は、表面張力でぎりぎり持ちこたえているコップみたいな状態です。
水はふちまで来ていて、あと一滴であふれる。
そこへ優しく肩に触れられると、それが最後の一滴になってしまうんです。
うれしくないわけじゃない。
ただ、受け止める余白が、その日はもう残っていない。
こういう時期の乙女座は、スキンシップだけでなく、会話や連絡まで全体的に省エネになりがち。
忙しさの波が引いてコップの水位が下がれば、元の温度にしっかり戻ってきます。
正直言うと、この見きわめがいちばんむずかしい。
彼の仕事の予定と照らし合わせてみると、案外すっきり説明がつくこともあります。
乙女座男性の距離感を、パーソナルスペースで読む
人のまわりには、見えない四つの円がある
パーソナルスペースは、心理学でよく登場する言葉。
他人に入ってこられると落ち着かなくなる、体のまわりの見えない縄張りのことです。
アメリカの文化人類学者エドワード・ホールは、人と人との距離を四つに分けた。
恋人や家族にだけ許す密接距離は、だいたい四十五センチ以内とされています。
友達と雑談するくらいの個体距離は、四十五センチから一メートル二十センチほど。
その外側に、仕事の打ち合わせくらいの社会距離。
いちばん外に広がるのが、講演会の壇上と客席くらいの公衆距離です。
この円の大きさは、人によってずいぶん違います。
乙女座の男性は、密接距離の円の手前に、分厚い緩衝地帯を持っている印象。
恋人であっても、そこへ入るには、ちょっとした手続きがいるんです。
乙女座の密接距離は、自動改札みたいなもの
この密接距離の入り口は、駅の自動改札に似ています。
ICカードをピッとタッチすれば、すっと開いて通してくれる。
ところが、タッチせずに勢いで通り抜けようとすると、ピンポーンと鳴って扉がパタンと閉まる。
(あれ、地味に恥ずかしいんですよね…)
このICカードにあたるのが、予告や合図。
手、つないでもいい?のひと言だったり。
黙って開かれた手のひらだったり。
それさえあれば、乙女座の扉は、拍子抜けするほどすんなり開きます。
乙女座の密接距離は、タッチすれば開くし、飛び越えようとすると閉まる。
問題は扉の固さじゃない。
タッチしたかどうか、それだけなんです。
乙女座男性は、スキンシップ以外の言葉で愛している
触れない代わりに、彼が差し出しているもの
乙女座の奉仕は、細かくて、地味で、おそろしく的確です。
新しい靴で歩いていたら、何も言わないのに、コンビニで絆創膏を買ってきてくれた。
スマホの充電が切れそうだとぼやいたら、翌週から彼の鞄にあなた用のケーブルが入っていた。
気づけばいつも、彼のほうが車道側。
あなたの部屋の、閉まりの悪かったクローゼットの戸を、黙って直していた。
こういう一つひとつが、乙女座にとってのハグであり、手つなぎなんです。
スキンシップが少なくて寂しい夜は、こういう出来事をスマホのメモに書き出してみてほしい。
思いのほか、スクロールしないと収まらない長さになるかもしれない。
乙女座男性のスキンシップ拒否が、冷めたサインのとき
触れないことより、ほかのものが一緒に減っていないか
ここまで乙女座の肩を持ってきましたが、もちろん心が離れているケースもあります。
見分ける手がかりは、スキンシップだけが少ないのか、ほかのものも一緒に減っているのか。
あなたの話への質問が、めっきり少なくなった。
次の予定を、向こうから立てなくなった。
さっき挙げた細かな気づかいが、いつのまにか消えていることも。
触れないうえに、こういう変化まで重なっているなら、乙女座の中で何かが動きはじめているのかも。
もうひとつ見たいのは、以前との比べ方。
最初から控えめだった人が控えめなのは、ただの性格です。
前は向こうからつないでくれていた手が、ある時期からぱったり来なくなった。
そういう変化があったなら、その時期に何があったのかを振り返ってみるといい。
仕事の山場だったのか、二人の間に引っかかる出来事があったのか。
付き合う前のボディタッチは、乙女座には早すぎることも
付き合う前の乙女座男性の腕に触れたら、半歩うしろに下がられた。
これって脈なしですか、という相談もよく届きます。
正直言って、判断を急ぐのはもったいない。
乙女座は、まだ恋人と呼べない段階での触れ合いに、罪悪感に近い戸惑いを覚えやすい。
付き合ってもいない相手に気安く触れるのは、相手を軽く扱うことにならないか。
そんなふうに考える、ある意味すごく律儀な人たち。
付き合う前に見るべきは、触れ合いより会話の温度。
あなたの話をよく覚えているか、次に会う約束を具体的に決めようとするか。
そこに熱があるなら、触れられないことは、ほとんど気にしなくていい。
むしろボディタッチを控えめにしておくほうが、乙女座からの信頼はぐっと上がります。
乙女座男性とのスキンシップを自然に増やすコツ
手は、つかむより差し出して待つ
いきなり手を握るのではなく、自分の手を静かに差し出して、あとは待つ。
手のひらを上に向けて、ほんの少し彼のほうへ。
これが、さっきの自動改札でいうタッチになります。
自分のタイミングで握り返せるのは、乙女座にとってものすごく気が楽なこと。
触れるかどうかの決定権が彼の側にあるので、驚きも、失敗の不安も入りこむすきがない。
最初は気づかれずに素通りされることもあるけど、それはそれでよし。
(私は三回くらい見事にスルーされました笑)
何度か繰り返すうちに、差し出された手はサインなんだと、彼の中で登録されていきます。
予告のひと言は、ムードを壊さない
手、つないでもいい?
ぎゅってしていい?
先に聞くのはロマンチックじゃない気がして、ためらう人も多いはず。
でも乙女座にとって、このひと言はムードを壊すどころか、安心のスイッチ。
予告された避難訓練みたいに、心の準備ができるんです。
しかも、聞いてくれたこと自体を、自分を大事に扱ってくれた証拠として、ちゃんと覚えている。
照れくさそうにうなずく乙女座男子の顔は、一度見たら、たぶんクセになります(笑)
触れ合いの階段は、一段ずつ上る
乙女座とのスキンシップは、エレベーターより階段。
いきなり最上階まで運んでもらうんじゃなくて、一段ずつ、自分の足で上っていくイメージです。
ソファで並んだとき、肩と肩が触れるくらいの距離に座る。
歩きながら、袖の端をちょこんとつまむ。
手の甲同士が、ときどき軽くぶつかるくらいの距離感。
そこまで来たら、差し出した手を握り返してもらえる日も、そう遠くない。
場所選びも、階段の一部です。
最初のうちは、人目のある街なかは避けたい。
二人きりの部屋や、人通りの少ない夜道のほうが、乙女座は肩の力を抜きやすいんです。
一段上れた日は、うれしかった、と短く言葉にして返す。
それが、次の一段を上る勇気になります。
乙女座男性にスキンシップの寂しさを伝えるには
責める言葉より、私はこうされるとうれしい
どうして触ってくれないの?
私のこと、好きじゃないんでしょ。
寂しさが限界に来ると、こういう言葉が口から飛び出しそうになります。
ただ、責められたと感じた乙女座の頭は、自分を責めるほうへ回りはじめる。
そうなると、ますます手を引っこめてしまうんです。
伝えるなら、主語を私にして、してほしいことを具体的に。
私は、帰り道に手をつなげるとすごく安心する。
会ったとき、最初に軽くハグしてくれたらうれしいな。
乙女座は、ぼんやりしたお願いより、やり方がはっきりしたお願いのほうが得意です。
何をすれば喜んでもらえるのかさえわかれば、あとはあの几帳面さの出番。
びっくりするほどきちんと続けてくれます。
話すのは、拒まれた直後の気まずい空気の中より、二人ともお腹がいっぱいで機嫌のいいときに。
