壁の向こうで、笑い声がしていた。
給湯室の隣が小さな打ち合わせスペースになっていて、そこに彼がいた。獅子座の男性。声がでかいから、誰と何を話してるかまで筒抜け。後輩をいじって、自分でウケて、また笑ってる。
私の友人がその部屋に入っていった。数秒で、音が消えた。
ぷつん、という感じ。スイッチを切ったみたいに。彼女が用件を伝えて出てくるまで、彼の声は一度も聞こえてこなかった。
戻ってきた彼女が、うわあ、と小さく言った。ここまであからさまだともう笑うしかないよね、と続けて、でも全然笑ってない顔をしてた。
獅子座の避け方は、音量が下がらない
姿は消さない。態度だけが消える
好き避けと聞くと、目を伏せてこそこそ距離を取る姿を想像する人が多いと思う。獅子座は、それをやらない。
彼らは隠れるのが下手というより、隠れるという発想がない。避けているのに、なぜか同じ空間にいる。会議でも飲み会でも、ちゃんと現れる。むしろ普段より声を張ってたりする。
消えるのは存在じゃなくて、こちらに向く分だけ。目線と、話しかける回数と、名前を呼ぶ習慣。そこだけが抜き取られる。
獅子座の好き避けは、静かにならない。逆に、周りに向けた音量が上がる。
見てほしいのに、近づけないという矛盾
なぜ他の人にだけ明るいのか。意地悪でやってるわけじゃない、と思う。
彼の中では、こちらに気持ちを気取られたくないという防衛と、それでも見ていてほしいという欲求が同時に走ってる。結果として、こちらに聞こえる場所で、こちら以外に向かって楽しそうにするという奇妙な動きになる。
はぁ…、と溜め息をつきたくなる気持ちはよく分かる。傍から見ると当てつけにしか見えないから。
けど、当てつけをするほど意識してるということでもある。無関心な相手のために、わざわざ音量を上げる人はいない。
好き避けには、始まった日がある
心当たりが浮かぶなら、それが答え
判定でいちばん使えるのが、これ。
獅子座の好き避けは、じわじわ始まらない。ある日を境に、急に切り替わる。先週まで毎日話しかけてきた人が、月曜から別人になってる。落差が激しいぶん、こちらは混乱する。
その境目に、たいてい何かが起きてる。上司に詰められた場面を見られた。冗談を言って場が静まった。同僚に、あの子のこと好きなんじゃないの、と冷やかされた。あるいは、こちらが他の男性と親しくしているのを目撃した。
獅子座の男性は、格好悪い自分を見た人から遠ざかる。嫌ったんじゃなく、見られたことに耐えられていない。
嫌い避けは、最初からずっとその温度
反対に、いつから避けられているのか思い出せない場合。境目がなくて、気づいたらこの距離だった場合。
そちらは冷めているというより、最初から温度が上がっていない。獅子座は関心のある相手には初速が速い。数週間で分かるくらいには分かる。
半年経っても関係の温度が動かなかったなら、それは避けられているんじゃなくて、そもそも近づかれていない。
きつい話だけど、判定としてはかなり信頼できる。
場面を変えると、差がはっきり出る
大勢のときと、二人きりのとき
好き避け中の獅子座は、集団の中では普通に振る舞える。何なら愛想がいい。ところが二人になった瞬間、急に業務連絡だけの人になる。用件を早口で済ませて、さっさと立ち去る。
守ってくれる人数が減ると、隠しきれなくなるから。
嫌い避けだと、この差が出ない。大勢でも二人でも同じ薄さ。丁寧で、短くて、一定。落差がないというのが、そのまま答えになってる。
一週間ぶん思い返して、場面ごとに温度が違ったなら、そこには何か動いてる。
連絡は止まるのに、足跡だけ残る
LINEの返事が急に短くなる。既読だけついて、返ってこない日もある。なのに、投稿したストーリーは毎回見てる。しかも早い。上げて数分で足跡がついてる(笑)。
これ、好き避けの獅子座がやりがちなやつ。話しかけられないぶん、見るほうだけ止められない。
嫌い避けだと、両方消える。返事も来ないし、閲覧も来ない。そもそもこちらの投稿が視界に入っていない。
見られてはいる、という状態が続くなら、彼はまだこちらから目を離せていない。
頼ったときに、手が動くかどうか
獅子座は、頼られると断れない。ここは性格の芯みたいな部分で、好き避け中でも変わらない。
態度は素っ気ない。目も合わせない。なのに、重い荷物は勝手に持つし、面倒な調整も引き受ける。しかも、こちらが礼を言う前にいなくなる。
嫌い避けのほうは、対応が丁寧なのに動きが出ない。分かりました、確認しておきます、で終わって、そのまま流れる。感じは悪くない。ただ、手が動かない。
無愛想なのに助けてくれるか、愛想はいいのに何も起きないか。ここで、けっこう割れる。
他の人に向ける態度との落差
最初の給湯室の話がまさにこれ。
好き避けの獅子座は、こちらの前でだけ表情の量が減る。他の同僚には冗談を言い、後輩をいじり、上司にも軽口を叩く。その落差が大きすぎて、周囲が先に気づいたりもする。
嫌い避けだと、落差がない。誰に対しても同じ明るさで、こちらにも同じ明るさが配られる。
明るいのに冷たい。この組み合わせが、実はいちばん望みが薄い。
嫌い避けの獅子座は、驚くほど礼儀正しい
格好をつけなくなる、という決定的なサイン
これは書いておきたい。
獅子座の男性は、好きな相手の前では自分をよく見せようとする。姿勢が伸びる。声が張る。前髪を気にする。仕事の話をするとき、少しだけ盛る。
関心がない相手の前では、そういう努力が一切出てこない。寝癖のまま平気で喋るし、失敗を見られても照れない。愚痴もこぼす。ある意味、素だとも言える。
つまり、彼が自分の見え方を気にしていない相手は、恋愛の枠に入っていない。ここは残念ながら、かなり確度が高い。
気を許してるんじゃないの、と思うかもしれない。獅子座に関しては逆。緊張が消えているほうが、遠い。
報告も相談も、こちらを通らない
嫌い避けというより無関心に近い状態だと、彼の出来事がこちらに届かなくなる。昇進しても、車を買っても、旅行に行っても、伝わってくるのは第三者経由。
獅子座は、聞いてほしい人にしか報告しない。共有されない側にいるなら、席は空いていない。
彼が、避けている理由を口にしない事情
折れた記憶を、長く持ってしまう
獅子座は打たれ弱いというイメージがないと思う。実際、失敗した直後は普通に笑ってる。周りには全然引きずってないように見える。
中では違う。人前で恥をかいた場面を、彼らは何年も保存する。しかも、その場に誰がいたかまでセットで覚えてる。
だから、こちらが何もしていなくても避けられることがある。悪いのは出来事のほうで、こちらは目撃者にされただけ。理不尽だけど、そういう仕組みらしい。
打ち明けたあとに、急に逃げる
心理学の通信講座で自己開示を扱ったとき、私は膝を打った。人は、普段より深く自分を話したあと、後悔と気恥ずかしさに襲われることがある。言いすぎた、重かったかもしれない、という感覚。
獅子座の男性は、これが強く出る。
飲みの席で仕事の弱音をこぼした翌週から急に距離ができた、みたいな話をよく聞く。あれは嫌いになったんじゃない。裸を見せた気分になって、慌てて上着を着ただけ。
心当たりがあるなら、そこが起点。そして、こちらが特別扱いされていた証拠でもある。彼は誰にでも弱音を吐かない。
判定できたあと、最初にやること
好き避けなら、なかったことにして話しかける
一番効くのが、何も気づいていないふりで、いつもどおりに接すること。
避けられてる、と匂わせない。傷ついた顔も見せない。用件だけの短い会話を、人がいる場所で、軽い温度で。
獅子座は、恥ずかしさが消えれば自分から戻ってくる。必要なのは、彼が体裁を保ったまま戻れる道を残しておくこと。詰めると道が塞がる。
もうひとつ、頼るのが効く。これ得意ですよね、で十分。断れないし、頼られた瞬間に彼の中の空気が入れ替わる。しゅっと背筋が伸びるのが分かるはず。
嫌い避けなら、線を引いたほうが早い
落差がない、足跡もない、格好もつけない。この三つが揃ったなら、粘る意味は薄い。
獅子座は判断が速い星座で、迷っている期間そのものが短い。長く保留にされているように見えるなら、実はもう保留じゃない。
仕事の付き合いとして普通に接すればいい。関係を断つ必要もない。ただ、待つのはやめる。こちらの時間のほうが惜しいから。
踏んだら終わる一手
避けてますよね、と本人に聞くこと。これが最悪。
獅子座は、余裕のない自分を指摘されるのを何より嫌う。図星であればあるほど、笑って否定して、そのまま距離を固定する。パタンと閉まる感じ。
長文の連絡も同じ。誠実さのつもりが、圧として届く。二行で足りる。
人前でのいじりも避けたほうがいい。好き避け中の彼は、いつもより余裕がない。普段なら笑って返すことが、その時期だけ刺さる。
階段の踊り場で、何が起きていたか
三か月後に判明したこと
給湯室の彼の話には続きがある。
私が嫌い避けだと判定したせいで、友人は諦めた。挨拶だけの関係になって、飲み会も別のテーブルに座るようになって。
三か月後、共通の同僚から聞いた。彼が避け始めたのは、四月の終わりのある日からだったらしい。その日、彼は取引先とのやり取りで大きなミスをして、部長にきつく詰められていた。
場所が、階段の踊り場。
そこを通りかかったのが、私の友人だった。本人はまったく覚えていなかった。彼のほうは、見られた、とはっきり認識していた。
翌日から、音が消えた。
目撃者から逃げる、という不器用さ
私の見立てが甘かったのは、獅子座を分かりやすい星座だと決めつけていたところ。堂々としてるから好き避けなんてしない、と勝手に思ってた。
実際は逆で、堂々としていたい人ほど、崩れた自分を見た相手から離れる。ぐしゃっとした感情の処理を、他人に手伝わせない人たちだから。
友人は結局、半年後に社内の異動で別のフロアに移った。今も普通に挨拶する関係のまま。あのとき私が違うことを言っていたら、と考えると、いまだにちょっと胃が痛い(泣)
見るのは、いつからかという一点
落差、足跡、格好をつけるかどうか。並べてはみたけど、最初に確かめるべきは日付だと思ってる。
避けられ始めた日を思い出せるなら、それは好き避けの可能性が高い。思い出せないなら、たぶん最初からその距離だった。
獅子座の男性は、隠すのが下手なぶん、痕跡をたくさん残してくれる。うるさいくらいに。
今週、彼が誰かと笑ってる声が聞こえたら。その声が、こちらが部屋に入った瞬間どうなるか。そこだけ確かめておけば足りる。
